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るべれてん 【 saylus : [根性] 】

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サラリーマン
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見習いカトリック信徒
エクソシスト

[レベル]
21

[称号]
割愛

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[MP]
315 / 645

 

 

 

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> Chapter.1 - 1 -剣の裏、陽炎のように > サイラスさんの小説事情Peaceful Epitaph - リカルドの詩 -
> Chapter.1 - 1 -剣の裏、陽炎のように
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 イメージ通りに、色は働く。
 それが、神がこの世界に与えた、たった一つの秩序であった。



 太陽は沈まず、月は姿を決して見せる事は無く。
 各地に居るモンスターは人を捕食し、人の住まう町や村を荒地へと変えていく。
 だから人は、自らの手で秩序を創り上げた。
 カルディルにある三つの“島”に1つづつ国を建て、人の纏まりと言う秩序であったり
モンスターから町村を守る為の民間の戦士ギルドである“ハンター”や、ジョワユース
王国のパラディン十二騎士団等のような自衛手段を得る為の秩序である。

 しかし、何よりも特筆すべきは“時間”と言う秩序だろう。

 自らの生活の中に“時間”と言う秩序を加えたからこそ、色を働かせるには行使者の
時間を消費しなければならないので、言うまでも無く自らの時間が無くなれば、天寿全う
と見なされて死に至る。
 余りに代償の大きな力ではあるが、この時が支配する世界カルディルでは、生きる為
には必要不可欠な力であった。


 人々の間で語り継がれている伝承によると、この世界を創った神は三人居たと言われ
ている。
 世界に光を与えた太陽神ルーフ、世界に水を与えた海神マナナン。
 そして、この世界に命を吹き込み様々な秩序を与えたのが、時の神ドヌーである。
 太陽神ルーフと海神マナナンはこの世界に各々一つの力を与えた後、長い眠りにつ
いた。時の神ドヌーは、自らの住む巨大な塔を囲うように三つの浮遊した大陸を創り、それ
を巨大な、弓形に曲がった橋で繋げた。
 その後時の神ドヌーは、三つの大陸に春夏秋冬の時を与え、季節が十二の町を巡るよ
う定めた。
 朝になれば陽が昇り、夜になれば月が人々を照らす世界。それが、このカルディルと言う
世界になるはずであった。


 が、しかし、そうはならなかった。


 何故ならば、裏切りの神が時の神ドヌーを塔に幽閉し、裏切りの神自らが時世界カルディ
ルを支配し始めたからだ。
 裏切りの神は、時の神ドヌーの創りし世界から秩序を奪い始めた。
 陽は沈まず、月は姿を隠し、季節は巡る事無くただ一箇所に留まっている。
 この世界に十二ある町は、常に一つの季節しか持っていなかった。
 だから人は、自分たちの町が持つ季節の名を自らの住む町の名とした。
 決して移り変わらず、そこに留まり続ける季節を自らの町の一部と見なして。




- 1 -


 雪解けが始まり、蝶や小鳥が忙しなく空を駆け巡り、つくしは太陽に会釈をする為に丈を
伸ばし、深緑の中に桃色や白色の花を万緑叢中紅一点とばかりに散らすサンザシの花が
風に揺られる季節が、春である。
 詩人にとっての春は喜びを与えてくれるものであり、旅人にとっての春は冬の苦難から開
放される証であり、農民にとっての春は作物を芽吹かせる、最も忙しい季節である。それ故
に芸術家は、春の感動を他の季節まで持ち込む為に、それを他人と分かち合いカンバスや
文字等の窮屈な額縁の中に可能な限り押し込めるのである。
 太陽神ルーフより与りし光の恩恵を最も感じられるのは、春から夏にかけての季節だ。
もう少し噛み砕いて言えば、四月から五月にかけての僅か二ヶ月間と、湿気が多くじめじめ
とした雨季である六月と、陽が燦々と照りつけ、嫌味な程に大地と人とを平等に焼く、七月
と八月だ。特に春は、僅か二ヶ月間しかないからこそ、森羅万象より授かる感動はひとしお
であり、感動を探しても探しても決して探し足る事は無いのである。
 それ故に太陽神の名が、アフラ=マズダと置き換えられてはいても、他の二国と比べ物
にならない程に太陽神信仰が根強く、太陽神信仰宗教の頂点に立つ教皇ゼルツェ・ドライ
アンレディーはアンレディーⅢ世と名乗り、この五月から八月までの季節を留める聖ヒルガ
ロット公国に君臨していた。
 聖ヒルガロット公国は首都を六月の町ユニアスとし、そこを中心にして、光の神アフラ=
マズダの名の下に強大な権力を振るっていた。


 六月の町ユニアスを北とすると、その南東にある五月の町メルネの更に東側には、隣国
ジョワユース王国領である四月の町エブレーンと聖ヒルガロット公国領である五月の町メル
ネとを結ぶ、巨大な橋があった。
 ジョワユース王国兵とヒルガロット公国兵が共同で治安を守っている唯一の場所であると
同時に、最も人が忙しなく動いている橋である。
 橋の端では旅人や行商人を相手取り、衣服や食料等を売る商人の威勢のいい掛け声が
そこかしこを飛び交う中、商売人の掛け声に、ジョワユース王国兵や、その騎竜である飛竜
が野次を飛ばし、互いに罵り合いながら周囲で笑い声が溢れゆく。

「ヤフェン兄弟の店では、サテンがメートル当り五十ポイヌだったぞ!」

 ジョワユースの兵士が、飛竜の上から商人に声をかける。

「こーりゃ参ったな、俺ンとこのサテンは仕入れ値が五十二ポイヌだから、赤字食らっちま
うぜ!」

 辻商人が、天を仰いではいるが別段困った表情を浮かべずに、飛竜の上の兵士を見上
げる。

「おっさん、仕事が終わったらそのサテンを買ってやるから、新しい仕入れ先でも見つけて
来るんだな!」
「サテンだけなんて懐ちっせえ言わずに、店のモン洗いざらい買ってってくれよ!ちっとは
負けてやるぜ!」
「十割引きにしてくれれば、全部持ってってやらんでもないぞ!」
「カンベンしてくれよ!嫁さんにしこたま引っぱたかれっちまうじゃねえか!」
「ほう、おっさんにも嫁さんが居たのか。それなら、嫁さんに逃げられないよう願をかけて、も
う少し買って行ってやろうかな!」
「はっはっは、そんな縁起でもねえ願だけはかけられたくねえな!」

 そんな会話が飛び交うのは、日常茶飯事である。






 そんな活気のある、ジョワユース王国と聖ヒルガロット公国とを繋ぐ大橋の手前には、五
月の町メルネまでの約5キロメートルに渡り丘陵が広がっていた。
 メルネと大橋を繋ぐ道、ポホルカス街道の端々には鉱山が多く、この時世界カルディルで
唯一、宝石が採取出来る場所でもあった。
 その鉱山の一つ、グレンツェ鉱山の奥で、赤毛の男が蜀台を傍らに置き、青色の光を淡く
放つ宝石を熱心に皮袋の中に詰めている。
 宝石を一つ、また一つと放り込んでいく内に、皮袋は一杯になる。そうなれば赤毛の男は、
懐から綺麗に折り畳まれた空の皮袋を取り出し、一杯になった皮袋の口を紐で締めて再度
宝石を放り込んでいく作業に戻る。
 単純な作業だが、赤毛の男はそれに飽きるどころか、今にも鼻歌でも歌い出さんばかり
に上機嫌である。

「こんなモンスターの巣穴みたいな所、物騒過ぎて頻繁に来る訳にはいかないからな。持
てるだけ持って、とっとと撤退しないと」

 口では不安をちらつかせるが、手はそんな事などおかまい無しに、一つ、また一つと青い
宝石を布袋に放り込んでいく。
 赤毛の男は暫く石を拾っては皮袋に放り込み、拾っては放り込みを繰り返していたが、も
う入れる袋が無くなったのか、静かに立ち上がった。と、丁度手元を照らしていた蜀台の炎
が消えかかっていたので、赤毛の男は首から提げている、そのままでも引っくり返せるよう
にぐるっと一周、鉄のリングで支えられた砂時計を、指先で器用にくるりと回し、小さく、か
つ短く「カーマイ」と呟いた。途端、蜀台にちょこんと乗った蝋燭の先から炎が上がる。先程
回したばかりの砂時計は、砂が一瞬にして全て落ちていた。
 赤毛の男は、青い宝石の一杯詰まった皮袋を腰のベルトにしっかりと固定し、傍らに立て
かけておいた斧を手に踵を返し、踵まである錆色のサーコートを翻して帰路についた。
 その顔に、満面の笑みを浮かべて。


 洞窟の出口を背にして丘陵を左に行けば、赤毛の男が目指す五月の町メルネがある。
 ここ聖ヒルガロット公国の中央にあるロナ湖は、ジョワユース王国への大橋から少し反
れて、大陸の下へと落ちる細く曲がりくねった川が流れていた。
 川岸にある石に座り、真夏の水のように生暖かくもなければ、雪解け水のように冷たくも
ない川の水に足を浸し、足をぶらぶらさせて足先から水滴を飛ばす行為を、延々と続けてい
る少女が居た。
 少しウェーブのかかった金髪を腰まで伸ばし、よく手入れされているのか、髪の毛の一本
一本がてんでばらばらに風と共に踊ったかと思いきや、気まぐれな風が少女の金髪と別れ
て旅に出た後は、少女のなだらかな肩を滑って元通り、背中に落ち着いた。
 赤毛の男は素直に、綺麗だな、と思った。尤も、後ろから見かけただけなので顔を称えた
訳では無いのだが。

 ―― やっぱり、春って素晴らしい季節だよな。
 ―― ヤナエイルだったら、川岸に近づく事すら危険だったのに。

 赤毛の男はそう一人ごちて、少女を見遣る為に足を止める。

 彼女の目の前で、巨大な生き物が両手を高く天に掲げた。
「いッ……?!」
 考える間も無く、赤毛の男は駆け出していた。数歩で少女の右斜め後ろに到着すると同
時に、少女にタックルをかけて左側へと突き倒す。と同時に、赤毛の男は両手で頭上に斧
を掲げる。
 間一髪、間に合った。
 巨大な生き物の爪は、赤毛の男が掲げる斧の柄に爪を引っ掛けていた。
「君、怪我は無い?」
 赤毛の男が、このバケモノにどう対処しようかと思案しながら、金髪の少女に声をかける。
「いきなり何をなさるのですか!」
 金髪の少女は憤慨して、赤毛の男をきっと睨みつけている。

 ―― 助けてやったのに、一体何だ……?

 赤毛の男は眉をしかめて、目の前のトラともサイとも似つかぬモンスターの腹に蹴りを入
れた。

 ―― こんな所でガルテスと遭遇するなんて、おれも素晴らしく運がいいな。

 赤毛の男はそう自虐し、首から提げた砂時計を右手で素早く引っくり返しながら、頭の中
で稲妻を描いて。

「その色……ウィオレス!」

 赤毛の男に蹴りを入れられた事で、ノックバックはしたが短時間で体勢を整えたモンス
ターは、自らに蹴りを入れた張本人に向かって爪を立てた両手を振り上げようとしていた矢
先に、赤毛の男が発した声に同調してモンスターの頭上に雷が落ちた。
 今度こそ完全に伸びたモンスターは盛大に水しぶきを上げて、浅い川にどうっと倒れた。
が、まだ死んではいない。
「おれの実力じゃ、こんなものか……」
 再度、自虐とも取れる言葉を発しながら、赤毛の男はゆっくりと伸びているモンスターの
横に立ち、丁度モンスターの首の真上に向かって斧を振り上げ
「チェックメイト、だ」
 言葉が終わると同時に、斧が振り下ろされた。
 戦いは終わった。一瞬の間を開け、モンスターの時間もまた同時に、終わった。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


 盛大に返り血を浴びた赤毛の男は、川の水で血を洗い流していた。

「大丈夫か?怪我は無いか?」

 相も変わらずふくれっ面をしたまま、少女は答える。

「貴方がわたくしに体当たりを仕掛けた時に、おでこをぶつけました」
「ははっ、ごめんよ。君が危ないと思ったから、つい、さ」

 血を洗い流し終わったのか、苦々しく笑う赤毛の男は、鎧下として着ていた長袖の薄手の
チュニックを絞り、そのまま羽織ってボタンを留めていく。

「貴方が守ってくれなくても、ちゃんと守ってくれる人がいます」
「守ってくれる人?そんなの、見当たらないけど……」

 赤毛の男は胸当てのスナップを、ばちん、ばちんと留めながら、きょろきょろと周囲を見
渡し、人影が無い事を確認しようとした。
 が、横で屈みこんで熱心に何かをしている男を発見した。

「おい、お前、一体何をしているんだ?」

 赤毛の男が話しかけても、屈んでいる黒髪の男は無反応だった。
 仕方なしに赤毛の男は彼の近くまで行き、黒髪の男の隣に屈みこんだ。

「何をしている?」

 黒髪の男は少し怒った表情で、赤毛の男の方を向いて自分の人差し指を軽く口元に当
てた。直後、その人差し指を目の前にあったアブラナの茎を指差す。

 ―― ……サナギ?

 黒髪の男の指先には、サナギから抜け出ようとしている蝶の姿があった。

「これを見ているから、おれに黙っていろ、と?」

 黒髪の男はこくん、と頷き、熱心にサナギを観察している。

 ―― やれやれ。とっととソッチのオヤジさんに、宝石を渡しに行きたいのにな。
 赤毛の男はそう思ったが、この奇々怪々な二人組みが何者かを知りたくもあったので彼
らに付き合う事にした。


 サナギは蝶になり、蝶は短時間で薄い四枚羽を乾かしきって、春風に小突かれながら飛
び去って行った。
 結局、黒毛の男は蝶が飛び立つまで熱心に観察し、飛び立つと同時に顔に満面の笑み
を浮かべて、呻吟を漏らした。

「すごいなぁ。ちょうちょさん、遠い所に飛んでいっちゃった」
「今時こんな些細な事で感動を覚える人も、珍しいな」

 赤毛の男は黒髪の男に対する率直な感想を告げると、黒髪の男は「へへっ、そうです
かぁ?」と言いながら腰を上げた。つられて、赤毛の男も立ち上がる。
 立ち上がって、自身の膝と藍色のサーコートの裾をぱんぱん、とはたいている黒髪の男
の背は、赤毛の男より随分低く、確かに赤毛の男が長身とは言え、それでも黒髪の男は
誰から見てもチビと言えただろう。赤毛の男が先程絞ったばかりの濡れた薄い長袖の
チュニックの上から着ている、胸と腰元のみを覆う安っぽい鉄の鎧を着ているのに対し、黒
髪の男は肩から腰までを全て守る、傍から見ればいかにも重そうで高価そうな空色の鎧を
軽々と着こなしている。
 黒髪の男は赤毛の男を見上げる為に、額を覆う、聖ヒルガロット公国の紋章である炎の
紋章が描かれた銀のバイザーをちょっと上げてから、少し首を傾げた。

「あれれ、あなたは誰ですかぁ?」
「今更聞かれてもなぁ……」

 黒髪の男は暫し思案した後、突然眉を少しつり上げて答えた。

「もしかして、悪い人ですかぁ?」
「普通、悪人が悪人と名乗るか?」
「むっ、それなら悪い人なんですか?」
「おれは悪人でも善人でも無い。ただの通りすがりなんだが……」
「そうですかぁ、だったら悪い人じゃないんですね」

 言って、黒髪の男はにぱっと笑う。対して赤毛の男は、がっくりと肩を落した。こいつ
は、超のつく天然か。そう思わざるを得なかった。

「えっと、お名前は、何て言うんですか?」
「人の名を聞く時は、まず自分から名乗るってのが礼儀じゃないのか?」

 赤毛の男は、少し呆れながら答える。

「ごめんなさい、そうでした。わたしは、バロテナ・ソト・クーデナスです」

 気を取り直して、赤毛の男はバロテナと名乗った黒髪の男に、左手を差し出す。

「おれは、リカルド・エルヴェンだ」

 バロテナはリカルドの左手を握り、ちょっと照れたのか、舌をぺろっと出して握手をした。

「へへっ、宜しくお願いします、リカルドさん」
「ああ、宜しく」

 おざなりに握手を交わした後、リカルドは振り返り、金髪の少女に目線を移す。

「所で彼女は、お前の連れか?」
「お前じゃないですよう。わたしは、バロテナですよう」

 頬をぷくっと膨らませたバロテナは、直後何かを思い出したのか、みるみるうちに驚いた
表情に変わる。

「わ、わ、ごめんなさぁい、ルフィーナお嬢様ッ!」

 ルフィーナと呼ばれた金髪の少女は、バロテナを一瞥して静かに立ち上がった。一方バ
ロテナは、鎧をがちゃがちゃとやかましい音を立てながら金髪の少女の足元に走り寄って
跪き、少女の右手を静かに取ってバロテナの頬に当てた。

「ちょうちょさんを応援してたら、つくしんぼを集めるの、忘れましたあ」
「いいのよ、バロテナ。別に今日ではなくとも、明日また取りに来ましょう」
「えっぐ、ごめんなさぁい、ルフィーナお嬢様ぁ……」

 嗚咽混じりに謝罪するバロテナの涙を掬うように、ルフィーナは両手でバロテナの顔を
撫でる。

「いいのよ、バロテナ」再度、ルフィーナは優しく呼びかける。

 一通りバロテナの涙を掬い終わったルフィーナは、バロテナに問いかける。

「所で、誰かもう一人、居るのですか?」

 目の前に居るじゃないか。そんな言葉を飲み込んで、リカルドは再度思う。ああ、この連
中は超のつく天然なんだな、と。凡人なら、目の前や付近にモンスターが居れば、腰を抜
かすか尻に帆をかけて逃げ出すのが大多数だ。いや、大多数と言う事は凡人の範疇にも
例外は居て、偶然にもレアな凡人に出会ってしまったのか……?それも、いちどきに、二
人も。まさか。そんなはずは無いだろう。全く、おれもこの連中に感化されて超のつく天然
思考回路になってしまったのか?

「ああ、悪い人じゃないですよー。リカルド・エルヴェンさんって言う、ただの通りすがりさんですよー」
「リカルド・エルヴェンさん?」

 ルフィーナはきょとんとした表情を浮かべたので、リカルドはルフィーナに近付き、先程バロテナがしたようにルフィーナの手を取って彼女の目線まで屈み、手を自らの頬に当てた。

「ああ、おれがリカルドだ。ごめんな、護衛が居たにも関わらず“目の前の”モンスターを駆除して」

 目の前の、と言う語句を強調してやると、バロテナはまた泣きそうな顔に戻った。

「……ミドルネームは?」
「残念ながらおれは、ジョワユース王国の出身だからな。ミドルネームが無いんだ」

 なるほど、とルフィーナが頷く。同時に、彼女の手はリカルドの顔を弄っている。
 国が違えば、文化も違う。聖ヒルガロット公国は国教を、この時世界カルディル全体で信
仰されている宗教、クルデア教のヒルガロット派と定めている。ヒルガロット派の名の通り、
宗派は国によって違うのだが。
 聖ヒルガロット公国では、国民全員に光の神アフラ=マズダの子の証としてミドルネーム
を付ける風習があるのだが、ジョワユース王国やフェルグス自治共和国ではミドルネームを
神聖なものや贅沢なものとし、聖職者や騎士や政治家などと言った特別な地位に立つ者に
しか赦されるものではなかった。

「わたくしは、ルフィーナ・ロイテ・キャライトです。以後宜しくお願いします」

 ルフィーナはリカルドに僅かに微笑む。
 が、それに違和感がある事にリカルドは気付いた。

「もしかして、ルフィーナ……」

 今、リカルドに笑いかけている彼女の目線がリカルドの目ではなく、首か胸辺りを見てい
る事。そして、先程バロテナが彼女の手を取って、自分の顔を触らせた事からリカルドが導
き出した答えは。

「お前、目が見えないのか?」

 バロテナは困った表情で、ルフィーナを見る。ルフィーナは笑顔を消さずに、リカルドを見る。

「光の神アフラ=マズダ様がわたくしに与えて下さったのは、目に見える光では無く、心を
のべつくまなく明るく照らす、強固でありながらも目に見えない、確固な光なのです」
「無神論者のおれに、そんな哲学問答のような話を説かれてもなあ……」

 頭をぼりぼりと掻いて、リカルドは明後日の方向を向く。

「それはいけませんね。わたくしたちを公平に明るく照らし、いかなる罪も光の焔で浄罪し
て下さる、光の神アフラ=マズダ様を信じないなんて。闇の神アンラ=マンユに付け込ま
れますよ」
「ジョワユース派じゃ、ヒルガロット派で言う光の神アフラ=マズダが、ジョワユース王国の
象徴である聖剣デュランダルの持ち主のローランで、闇の神アンラ=マンユが、裏切り者で
ローランの叔父のガヌロンやデュランダルの元の持ち主の巨人だからなあ……」

 国が違えば、信仰も違う。
 ジョワユース王国は騎士道を重んじる、悲劇の英雄譚であるローランの歌を基調とした王
国であり、聖ヒルガロット公国は太陽と、全てを浄化する炎の信仰を重んじる公国なのであ
る。
 リカルドは額を覆っているバイザーの中央に描かれた、ローランの剣デュランダルと、ロー
ランの親友オリヴィエの剣オートクレールがクロスしている紋章を指で軽く撫でた。

「ま、その光の神アフラ=マズダとローランが言ってる事は同じ、だろ?」

 ルフィーナとバロテナは、きょとんとした表情でリカルドを見る。

「そうだな、解りやすく言えば……。光の神アフラ=マズダとローランが願っていた事は同じ。
恒久の平和、だろ?」

 尤も、職業軍人向けの宗教と純粋な聖職者向けの宗教は、根本的に違うけどな、と言う
言葉を飲み込んで。

「そうですね。宗派は違いますが、同じクルデア教徒としての願いは一つです。願いや心が同じならば…………」

 ルフィーナは、左手を差し出す。

「私達と同じ人間であり、兄弟であり、何者にも代え難い、心強い友ですよね」

 リカルドは差し出された手を、強かに握る。

「宜しく、ルフィーナ」
「宜しくお願いします、リカルドさん」

 慇懃に握手を交わす横で、ぐぅーっと腹の虫が鳴る音一つ。リカルドとルフィーナは、思わ
ず音の発信源を見遣る。

「え、えへへ……。おなか、すいちゃいましたぁ……」

 頬っぺたを人差し指で掻きながら、恥ずかしそうに笑みを浮かべるバロテナ。

「そういや、もう昼メシの時間か」

 空腹感を感じたリカルドは、バロテナをフォローする。

「ルフィーナにタックルかけて泥だらけにしたのは、紛れも無くおれの仕業だしな。お詫びと
言っちゃ何だけど、一緒に昼メシでも食わないか?」

 リカルドの提案に、バロテナは両手を挙げて答える。

「わーい、行きましょうよ、ルフィーナお嬢様!お御馳走になりましょうようっ!」
「そうですね。これで、おあいこにしましょう」

 ルフィーナの同意も得られたので、話は決まった。

「じゃ、行こうぜ。……おれの親友も、紹介するよ」

 リカルドを先頭に、バロテナはルフィーナの手を取って、一行は五月の町メルネへと向かい始めた。





- つづくー。 -



本当は富●見書房さんのファンタジア小説大賞に
イヤガラセとしか思えないような出来の作品を投げ込もうとして
時間が無い・作品の内容が規定の範疇に収まらない・素直にゲームにした方が
見栄えがいい等の理由であきらめたいわくつきの作品です。
まだまた続くと思うよ!時間ないけど!!



ちなみにこれからの展開。
リカルドが猛獣に変身して世界を焼き尽くすのですが
自衛隊が出動して鎮火されて感動のエンディングになります。
大嘘です。

2007.12.11(14:35)|Peaceful Epitaph - リカルドの詩 -コメント(2)TOP↑
ブログパーツ、ブログでレベルアップご利用ありがとうございます。拝見したところ二番目の設定変数を正しく記述できていない模様です。以下のように修正してみてください。経験値がゼロでなくなれば設定完了です。(現在は僕のFC2のブログの経験値が表示されている状態)

(誤)
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(正)
http://taisaonline.blog97.fc2.com/?xml
From: Boreal Kiss * 2007.12.11 14:59 * URL * [Edit] *  top↑

すいません、今訂正してきました。
注意ありがとうございます(。`・ω・)ゝ
From: Dの中尉 * 2007.12.12 08:36 * URL * [Edit] *  top↑

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男ホル注射さぼってます。
理由は、お外に出ると一日中頭痛と吐き気が止まらないから。
生き残りたい。

【スペック】
生年月日:平成元年4月28日
年齢:今年で22才
性別:フツーの兄ちゃん
その他:条件、眼鏡等。但しAT車に限る。
身長:ちみっこい
体重:一ヶ月で10kg痩せた
性格:
自称、ただのにーちゃん
他称、悪人、変態、など様々である。

【好きなもの】
おっさんキャラ。特にFF7のシドとうたわれのクロウとFFTのダイスダークは別格。ゼノギアスのジェサイアとシタン先生も好き。
ガタイのいい男キャラ
パラディン/クルセイダー
ROの女プリースト系のスリット
及び、女教授のふんどし。
アルベール・カミュ作品全般
シャルルマーニュ伝説
エッダ、カレワラ、ケルト神話。
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3と9と11と10-2,12はやった事が無い。
FFTのダイスダークはおれの兄。シドルファスは俺のパパン。
アルルゥとアグリアスたんとゼノギアスのマリアたんとマルーたんと雛苺はおれの嫁。
誰が何と言おうと、死んでもアルルゥと雛苺だけは誰にも渡さん。
チェスも好き。紅茶も愛してる。
アールグレイとダージリンとセイロンウバとアップルティーとカモミールティーは最高だ。

【嫌いなもの】
和風スイーツ(笑)ほぼ全て。きなことかもう大嫌い。
とろけるチーズ嫌い。でもピザのチーズはセーフ。
チーズハンバーグとかチーズバーガーとかはアウト。
後、SFモノの作品もあまり好きじゃない。
和風ファンタジーもあまり好きではないかな。
後、女性の立場を上げよう!って団体も嫌い。もう十分じゃねーか。

正直どちらかと言えば和食派。
肉より魚派。
揚げ物より煮物派。
東京で行ってみたい所は浅草。
旅行に行きたい所は京都。テラへ。
半年以内に叶う夢は甲斐性のある男になる事。
これから先の夢は子供を持つ事。
野望は生涯焼きそばとスパゲッティーとさばみそへの愛を貫く事。しいたけも大好きだよ。愛してるよしいたけ。

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