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るべれてん 【 saylus : [根性] 】

[ジョブ]
サラリーマン
フリーライター
見習いカトリック信徒
エクソシスト

[レベル]
21

[称号]
割愛

[HP]
2051 / 5634

[MP]
315 / 645

 

 

 

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> Chapter.1 - 不遜な近衛騎士長 - (1)> サイラスさんの小説事情新生ふぁいてぃんぐ!
> Chapter.1 - 不遜な近衛騎士長 - (1)
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- 1 -

 はっきりとはしない理由だが、彼は確固たる信念を持っていた。

 ―― それが、オレの夢だから。
 ―― もしくは、欲しかったから。

 彼は、風がひゅうひゅうと命を持たず吹き抜け囚人を茶化して行く牢獄で、延々と同じ作
業を繰り返していた。

 ―― いっその事、逃げ出しちまおうか?

 どうやって。そして、どのようにして。いつ。どこで。どうやって。何の為に。何をする為に。
何を求むが故に。

 …………何をしたいが為に?

 ―― オレは、たった一つの道楽の為に生きてきたんだからな。
 ―― いつか、夢を叶える為の手段とする為に。

 彼は無表情に牢獄の石を積み上げ、崩し、また積み上げていく。

 ―― ここじゃ、たった一つの道楽すら愉しめねえな。

 何度石を積み上げて崩したのか、もうわからない。
 けれども彼は、この無意味な作業をまだ続けるつもりらしい。

 ―― 偶然、やりたい事が出来ちまったかもしれねえだけなんだよな。

 この“自由な王国”と謳われている王国で、やりたい事を偶然にも出来てしまった。否、
もしかしたら未遂に終わっているかもしれないが。
 彼は何故投獄されているのか、いまいち理解出来ていなかった。
 ここでこれからメシを三食きちんと食って、好きな時に眠り、自らに与られるだけの時間を過ごす。
 傍から見れば、これは不幸以外の何物でも無いだろう。事実、彼自身も不幸だと感じている。

「あーあー、看守さんよ。たまーには散歩でもさせてくれりゃ、オレとしてはこれからの人
生、不満なんざひとかけらもねえんだけどな」

 彼は握っていた石を放り投げた後、目の前に居もしない看守に向かって声を張り上げ、水
滴を落す天井に腹を向ける。
 そう、居ないとわかっていながら声をかけたはずなのだが。

「エルフェス騎士長がヘマするからですよ。本当に騎士長、ツイてないですね」

 彼の牢獄の前には、一振りのサーベルを携えた看守が静かに立っていた。

「何だ、居たのか」

 サーベルを携えた看守が声をかけた囚人は億劫そうに、寝っ転がったまま首だけを看守
に向ける。

「騎士長が鈍感なだけですよ。こんな岩がゴロゴロある寒い牢獄なんだから、足音の一つ
も聞こえますでしょうに」

 看守は軽く肩を竦めて、親しげに柔らかな微笑を浮かべる。

「狡兎死して走狗煮らる、って言うじゃねえか。オレ、大人しく殺されるシュミなんざねえか
ら、こうやってぼけーっと石でも積み上げながら瞑想して、転職先を模索すンのに忙しいン
だよ」
「それはそれは。さすが“吟遊のラッカイ”ですね。きっと偉大なる哲学者か著名な詩人になれますよ、エルフェス騎士長」

 くくっ、と喉の奥で笑った看守に向かってエルフェス騎士長と呼ばれた囚人は、半ば上半
身を起こしてからツッコミを入れる。

「褒めンのか貶すのかはっきりしやがれ、ドライツェ」
「はっはっは、わたしが騎士長を貶すとでも?」
「貶す気満々だろうが、てめぇ」

 囚人は……否、囚人と言うには余りに似つかわしくない男は、成る程騎士長と言われれ
ばそうと見えるかもしれない。
 暗紫色の切れ長な目。栗色の後ろ髪が襟首まで届いているが、それでもきちんと手入れ
されていると一目でわかる髪形。
 そして何と言っても、きちんと着込んでいる、所々泥と血痕が付着した深緑色の全身鎧。
胸には、剣の紋章が刻まれている。

「で、何の用だ?メシにしちゃオレの腹時計が、まだちっとばかし早いと主張してンだが?見学だったら見学料取るぞ?」

 エルフェスはこの看守に対して、薄ら笑いを浮かべながら皮肉を言った。

「働かざるもの食うべからず、ですよ。仕事です。働いてから、たらふくメシ食って惰眠を
貪って下さい」
「仕事内容によっては迷わず脱走するぞ。とっとと言え、心の隅で考えておいてやる」
「王様がお呼びです。とっとと行って下さい。脱走したらメシは無しですよ。近衛騎士団総出
でとっ捕まえに行きますから」

 エルフェスは面倒そうに立ち上がって、牢獄の出口に近付きながら、呻吟混じりに頭をぼ
りぼりと掻いた。

「脱走したらメシどころか、首まで没収されちまうだろうが」


 看守は鍵を開けながら、このブラックなジョークを吐く直属の上司に向かって、先程と同様
に親しげな微笑を投げかけた。


「騎士長を黙らせるには、最も効果的な方法だと思うんですけどね。――さ、開きました。
はい、騎士長の短刀とレイピアです」
「サンキュ、これでやっと腰元が落ち着くぜ。……なーんかこいつが無いと、落ち着かねえ
からな」

 そう言いながらエルフェスは、馴れた手付きで腰の剣帯に短刀とレイピアを固定してい
く。

「それにしても、何で騎士長は女性が扱うような武器ばかりを好むんですか?」

 唐突に看守から投げかけられた問いに対し、エルフェスは少しだけ眉をしかめ、暫らく思
案して返答する。

「鈍重な両手剣や槍を扱うなんざ、オレのシュミじゃねえからな」

 ただこれだけを呟いて、エルフェスは国王に会いに行く為に、牢獄に踵の音を高らかに、
幾重にも響かせた。
 エルフェス・タイユフェール。
 彼はこのリット王国の、現役近衛騎士長だった。






 通常ならば、王城や近衛騎士長の家と言えば豪勢な建物を想像するだろう。
 大抵の人は、晴れ渡った空にぷかぷか浮かぶ真っ白な雲よりも白い城だとか、もしかした
ら何万人と言う兵士や騎士に囲まれても決して陥落しない程、強固な城を想像するかもし
れない。
 しかし、このリット王国だけは違った。確かにリット王国中を探しても、外見の豪華さでは
クェード城に勝る建物は存在し得ないだろう。
 城壁のそこかしこに飾られている、リット王国の紋章である平等を意味する槌と剣のクロ
スした絵が描かれた深紅の旗。衛兵達の着ている、綺麗に磨きこまれた甲冑。王城内を忙
しなく行き交う、学者や詩人や騎士達が互いに会釈する声。そのどれを取っても、気品と気
高さと高級感とに満ち溢れていた。
 問題はそこではないのだ。確かに、リット城のそこかしこに飾られている国旗や兵士一人
一人の着込む甲冑は、誰が見ても異口同音に高価な代物だと言うだろう。しかし、王城の
内装は打って変わって質素なものだった。
 国王の着る服は木綿の、そこらに居る平民が着ていても何ら違和感の無い程飾り気の無
い質素な洋服。後ろに控える宰相が着るローブもまた、安物の綿素材だった。贅沢をしてい
るようには到底見えない。もっと言えば、お世辞にも一国の国王と宰相に似つかわしい服装
とは言い難い。

 何故この様に、極限なまでに質素な王宮なのだろうか?

 答えは簡単だ。この王国では王宮に勤める者以外は全て平等で、国王始め王宮関係者
は皆、国民のシモベと言う考え方を尊重しているからだ。
 だから国王は浪費をしないし、自らも体を動かし汗水垂らして働く事もしばしばあるので、
国民に酷政を強いる事は決して無かった。
 そんな国王を守る筆頭の、平民出身である近衛騎士長エルフェス・タイユフェールは、こ
の国民を第一に考える国王陛下に並々ならぬ敬意を抱き、身命賭して守る事を誓ってい
る…………
 と思いきや、彼は近衛騎士長にも関わらず、この国王陛下の考え方を心底嫌っていた。

 ―― 大人しく椅子にふんぞりかえってりゃいいのにな。
 ―― 何でわざわざ、苦労する道を選ぶんだか。

 エルフェスは自らが仕えている主君の事を、世界一の馬鹿だと思っていた。無論、口に出
して言えばそれこそ文字通りに首が飛ぶ。だから、決して口に出しては言えないのだが。

「陛下、エルフェス・タイユフェールです」

 エルフェスは、二人の衛兵が槍を持って律儀に守っている謁見室の扉の前で、襟元を正
しながら声を張り上げた。

「入れ」

 中から、恐らくは宰相の物だと思われる、短くも律儀に低い声が聞こえてきた。エルフェ
スは扉を押し開け、謁見室に入り込むと直ちに一礼して、きちんと閉めた。ギギィーッと重
苦しい音を立てながら。
 踵の音をこの狭い謁見室に響かせた後、国王の目の前で膝を折る。

「お呼びでしょうか、陛下」

 質素な服装をした国王が嬉しそうに立ち上がるや否や、跪いている近衛騎士長に近付
いた。

「おお、来たか、近衛騎士長エルフェス」

 そんなん見りゃわかるだろ、と言う言葉を飲み込んで、エルフェスは返答をする。

「この節穴同然の目を持つ狩人めには、裁判所がお似合いだとお見受けいたしますが。こ
れはまた、随分と庶民的な裁判所ですな」

 無礼な口を利く臣下に、国王は苦笑で答える。

「はっはっは、相も変わらずわたしばかりか、近衛騎士長自身にも辛辣な皮肉だな」
「お褒めに預かり光栄です、陛下。これからもより一層、わたくしめの毒を持つ舌に磨きをか
けてゆく所存でございます」
「うむ、聞く方としては心は痛いが、これからもそなたの毒舌っぷりを楽しみにしておるぞ」
「それは、“陛下を徹底的にいたぶれ”と言うご命令と受けて宜しいでしょうか?」
「はっはっは、全く口の減らんヤツだ。そう思ってくれても構わんぞ」
「それでは、陛下は特殊な趣味の持ち主である、とわたくしの足らぬ頭にインプットしておき
ます。そのようなシュミをお持ちだともう少し早く理解していれば、わたくしめと致しましても、
もう少し気の効いた毒を吐けたでしょうに」

 全く表情を崩さずにジョークを言う臣下に対し、国王は満足そうに髭を撫でながら見下ろす。

「で、本題だ。近衛騎士長エルフェス・タイユフェール」

 先程の軽い感じとは打って変わって、国王は厳格な態度を取り始める。

「貴君は無罪の上極刑だ。わたしの相談に乗れ」
「唐突にこの謁見室を裁判所にしないで下さい。無罪の上極刑になった経緯を説明して頂
きたいものですね。そもそも無罪のクセに極刑とは何事ですか」

 理不尽で奇々怪々な、ふざけているとしか思えない国王の発言に反応してエルフェスは
立ち上がる。尤も、慇懃に礼をしたままではあるが。

「うむ、貴君が狩りをするわたしの護衛中に、鹿と間違えて主馬長を弓で撃っただろう」

 エルフェスは頷いた。過失とは言え、王の従者を殺しかけたから投獄されていたのだ。

「幸いにも主馬長の傷は浅いらしい。医者が大した傷では無いと言っておったので、彼女に
謝罪するのが一番の刑罰じゃなかろうかと思うてな」

 目を細めて髭を擦る王に、エルフェスは口の端を釣り上げて答える。

「なるほど、だから無罪で極刑なのですね。わたくしにとっては、現在の主馬長に謝罪をし
に行くのは、地獄の業火でこの身を余す所無く舐め尽されるより怖ろしい事と心得ました」
「確かに。あの主馬長は……」

 王は吐息混じりに言葉を綴る。

「憤慨すると手が付けられんからな」

 エルフェスは肯定する。

「この間なんて、わたくしが彼女のコームをちょっと拝借しただけで“弁償しろ!”と叫んで、
王城裏手の滝に突き落とされそうになりましたからね」
「はっはっは、そんな事もあったな」
「更にその前は、酔っ払った彼女にアッパーの練習だと言ってしこたま殴られたり」
「あの時は騎士長もボコボコにやり返していたから、おあいこではないか?」
「そうですね。彼女もわたくしも、全治半年間の大怪我でした。昨年なんて、我ら近衛騎士
団で栽培したピーマンや茄子等の夏野菜が収穫出来た時にですね」
「ほう、確か昨年夏の野菜は豊作だったな。何かあったのか?」
「折角野菜が沢山あるのだから、バーベキューなどでもしようと思いまして。主馬長に黙っ
て厩から馬を何頭か拝借して、馬肉でバーベキューをしたのです。それが主馬長にバレて、
団員の何人かは再起不能になりました」
「…………」
「他にもまだあります。王宮の見張りとして配置する兵士が余ったので、その兵士と連れ立
って東方まで視察と称して遊びに行こうとしたら、魂胆が主馬長にバレてしまい、三か月分
の給料を主馬長に横領されました。流石にあの時は、殴られるよりも精神的ダメージが大き
かったですね」
「……騎士長、まだあるのか?」
「ええ」

 エルフェスはしれっと答える。

「仕事中、少しだけサボッて紙飛行機を量産して飛ばしていました所、運良く彼女の後頭部
に当たりまして。哀れ紙飛行機はズタズタにされ、同時に製作者もズタズタに。それから、
近衛騎士団員の寮に巣を作っていた蜘蛛全てを箱に入れ、厩に投げ込んだ所、わたくしば
かりか副騎士長もボコボコにされ、あやうく馬の餌にされる所でした。先週なんて……」

 王が、呆れたように頭を抱える。

「貴君を更迭したい気持ちで一杯なのだが、どうだろうか?」
「それは早計の至りと言うものです、国王陛下。わたくし程の有能な近衛騎士長は、この世
界中探してもドコにも居りますまい」

 疑うように、半目開きでこの自意識過剰な近衛騎士長を見遣る。その近衛騎士長は懐か
ら世界地図を取り出して、リット王国の北東部を指し示す。

「陛下、我国の東にあるドレフュス帝国は知っていますよね?」

 王の返答を待たずに、エルフェスは淡々と続ける。

「先週、ドレフュス皇帝が斃れました。帝位継承権保持者は妾腹の子も合わせて、十三人
にも上ります。帝位継承権争いが勃発する事は、目に見えていますよね?」

 王は頷き、エルフェスに続きを促す。

「ドレフュス帝国で内乱が起きれば、難民が我がリット王国に押し寄せて来るでしょう。わた
くしの推測では、国境沿いの町民が全て難民になると計算して……」

 エルフェスは一息入れる。

「どれだけ少なく見積もっても、約二千万人です」

 エルフェスが言い切った後、国王は困ったように髭を撫でる。
 そう、本当に困るのだ。難民が押し寄せてくれば、嫌が応でも貧富の差が産まれてしまう
だろう。それではいけないのだ。この王国は、全ての民が平等でなければならないのだから。

「最低でも、二千万人分の職を確保せねばならぬのか……」

 がっくりと肩を落とし、嘆息を漏らす。一方の近衛騎士長は、やはり淡々と説明を続ける。

「道が無ければ造れば良いのですよ、陛下」

 国王は驚いたように近衛騎士長を見遣る。

「この王国の裏手には、エルダ川が流れています。そのエルダ川の上流は、どこでしょ
うか?」
「確かに川の上流は東だが、それとこれとでどう関係があるのだ?」
「川の流れを変えればいいのですよ。そうすれば、自然と人手が必要になってくるでしょう」
「確かに、川の流れを変えるには人手が必要だろう。しかし何故、川の流れを変える必要
がある?」
「城下町を見渡してみれば自然とわかる事でしょう。尤も、陛下が自らの足元しか見れぬ
程のド近眼ならば、不肖わたくしめが説明させて頂きますが?」

 悔しい事に、国王には答えがわからなかった。

「今度、わたしの目に合う眼鏡を作らせねばなるまいな」
「わたくしは老眼鏡を推奨しておきましょう」
「はっはっは」

 国王は苦笑を漏らし、王座に深く腰掛ける。

「いいですか?今我国で最も伸びている産業は、紡績業及び織物産業です。我がリット王
国の布は全て他国での評判がいいのに、安定して輸出が出来得る程の生産量は確保出
来ていません」
「うむ、確かに。紡績業は川の近くでなければ出来んからな」
「だから、その川ごと紡績業の連中を、東の国境沿いの町ヨルファニまで、連中のケツでも
蹴っ飛ばして追いやればいいのです。そうすれば布の生産効率が上がり、他国と布貿易を
する事でリット王国の経済が潤い、難民どもを効率よく処分出来るでしょう」
「処分と言わずに救済と言って頂きたいものだな」
「何、どっちにしろ川の流れを変えるのは危険な工事です。何千人かはそのまま川にどん
ぶらこっこすっこっこと流されてしまうでしょう」

 相も変わらず、この近衛騎士長はブラックなジョークを真顔で答える。

「川の流れを変えると、もし氾濫が起きれば工事がムダになるでしょう。ですから、東にま
ず水が流れる川の道を作り、完成してから現在の川の流れを妨げる堤防を造るのです。
さらば、もし氾濫が起きても、被害が最小限に食い止められるでしょう。既にその工事の手
筈は整っております。後は国王陛下のご承諾を頂ければ、今直ぐにでも着手出来るのですが」

 この近衛騎士長は、ただこの王宮を守るだけの近衛騎士長では無いのだ。リット王国全
体をのべつくまなく見渡し、警護しているのだ。だからこそリット国王は、この不遜な近衛騎
士長を高く買い、やりたい放題やらせているのだが。

「ああ、文句無しに許可を出そう。兵は何人割く必要がある?」
「全て近衛騎士団員で賄います。半数も居れば、問題無く事は進むでしょう。それに……」

 エルフェスは言い難そうに、左に目を逸らす。

「北のミレシア公国もなかなかにキナ臭いですよ。この間、我がリット王国に侵略すると高
らかに宣言していましたからね。あのミレシアの君主、アイアンサイド猊下も元気一杯野心
一杯のやんちゃ盛りなお年頃ですから。あの齢七十過ぎのご老体のドコから戦争を起こし
たがる程のバイタリティが溢れ出てくるのか、甚だ疑問ですがね」
「なるほど、なるほど。確かに、ミレシアは最近不穏な動きをしておるな。兵を減らすどころか、増強したい気持ちでいっぱいだな」
「だからこそ、近衛騎士団員から人員を割くのです。おわかりですか、国王陛下?」

 小莫迦にしたような口調の近衛騎士長が、口の端を釣り上げて国王陛下を見る。

「しかし、物事はそうカンタンにも行かぬのだぞ。エルフェス・タイユフェール近衛騎士長」

 近衛騎士長に負けず劣らずの小莫迦にした顔を、国王は近衛騎士長に見せつける。

「ほう、まだ何か困った事があるとでも?わたくしめの知らぬ事で?」

 完全に計算外の事態だった近衛騎士長は、驚きを隠せずに問いかける。

「だから最初にわたしが、貴君に相談に乗れと命令しただろう。……我がリット王国の南は
海だ。しかし西には……あの鎖国中で、忌むべきペパン王国があるだろう?」

 悲しそうに眦を下げて、国王は続ける。

「騎士長の故郷は、最もペパン王国との国境に近かった、西の廃村デルリフェルツだと聞いた。三年前、ペパン王国の十二騎士団に滅ぼされたとも」

 エルフェスは顔色一つ変えずに、この悲しそうな国王の話を聞いている。何故、自分の故
郷の話なのにこの国王が悲しむのか。エルフェスには、露ほども理解出来ずに。

「そのペパン王国がどうしたと?」
「最近、国境付近の砦に居るペパン王国兵が慌しく動いておると報告を受けた。もしかし
たら、我がリット王国に攻めてくる用意をしているのかもしれんので、守りを強化したい所な
のだが……生憎と、前途の理由で兵が一人たりとも割けん状況だ。とは言っても、我国は
ペパン王国と一度も戦火を交えた事が無い上に、ペパン王国は鎖国中であるから、兵力は
不明瞭だ。だから兵を一人でも多く割きたいのだが……兵を一人派遣する事すらも、叶わ
ぬのだ」

 この王国建国以来、ペパン王国とリット王国が戦争をした記録は無い。エルフェス近衛騎
士長と、ペパン王国に十二人居ると言われている、ペパン王国屈指の騎士で構成されたパ
ラディン十二騎士団だけは別だが。……しかし、何度使者を送り込んでも殺されはしなかっ
たがそのまま追い返され、砦に隙間無く兵を配置し、微動だにしないペパン王国は、リット
王国で一番の脅威の対象ともなっているのである。
 完全に想定外の問題に、この有能な近衛騎士長は完全に頭を抱えている……のが、普
通なのだが。
 この近衛騎士長は、常人では計り知れない程有能で、突拍子も無い思想の持ち主だった。

「ならば、ペパンの国王さんは何のつもりで不穏な動きをしているのか、ペパン国王本人に聞いてくればいいじゃないですか」

 この答えに国王が驚いた。

「ペパン国王が話し合いに応じる輩であれば、とっくにペパン王国と友好的になっておるだ
ろうが!」
「やってみなければわからないと思いますよ、陛下。今度は進展があるかもしれませんし。
人生、何事もチャレンジです」
「そもそも、使者を快く引き受けるようなチャレンジ精神旺盛な輩なぞ、皆目検討が付かん
のだが?」

 不穏な動きをしている今、今までは門前払いだった使者も宣戦布告と称して惨殺されるか
もしれない。そんな危険性の高い仕事など、誰も請けたがる者は居ないだろう。が、しかし
である。何度も言うが、この近衛騎士長は凡人ではなかった。

「そんなに褒めなくても、目の前に適任が居るじゃないですか。……言いだしっぺが実行、
と言うのは常識でしょう。さあ、リット国王陛下。わたくしめにお申し付け下さい。ペパン王国
と友好関係を結ぶ使者になれ、と」

 顔色一つ変えずに、近衛騎士長が言い終える。

「騎士長を失ったら、誰がこのわたしに毒を吐くと言うのだ。誰がこのわたしに、叡智を授け
てくれると言うのだ?!」

 騎士長はニヤリと笑って、言葉を紡ぐ。

「わたくしが陛下の御意思に叛く結果を出した事がありますか?この毒を持つわたくしめの
舌が、敵にもぎ取られるとでも?逆にわたくしの舌が持つ毒で、敵の体中を廻らせ、毒殺し
てご覧に入れますよ」

 景気よく笑いながら、エルフェスは自信たっぷりに言い終える。

「それに……わたくしはかつて、この体一つでペパン王国のパラディン十二騎士団を退けた
経歴を持つのですよ?あのペパン王国との国境沿いにあった町、デルリフェルツを一夜にし
て滅ぼした、パラディン十二騎士団を、ですよ?」

 顔にやはり自信たっぷりな表情を浮かべ、エルフェスは国王を見る。

「……そうだな。そうだったな、済まない。貴君は、我がリット王国の近衛騎士長だったな。
何とかと天才は紙一重、と言うが、ここまで何とかに近い天才もそうそう居るまい」

 国王はそう呟いて、椅子に深くもたれ掛った。眦を下げ、嘆息交じりに、笑顔を浮かべて。

「近衛騎士長エルフェス・タイユフェール。ペパン王国と我国リット王国との相互理解と、平
和への意識を深める為の使者として、その命を負う事を任ず。しゃれこうべで戻ってくる事
は赦さんぞ」
「わたくしとて、大人しく殺されるシュミはありませんからね。その忌むべきペパン国王様と
やらと、仲良くちょうちょさんでも追っかけてきますよ」

 冗談とも本気とも付かぬ事を言いながら、エルフェスは藍色のサーコートを翻して出口へ
と向かう。リット王国簡略地図を頭の上で振り回して、「交渉は愛と勇気と情熱だぁ~!」と
叫びながら。

「騎士長、忘れてはいないだろうな?」

 エルフェスは「ん?」と言う顔をして、玉座に深く腰掛けたままのリット国王を振り返る。

「我らの愛すべき主馬長を傷つけた罪を償う為には、彼女に謝罪せねばならぬと言う事を」
「その時だけ有給頂いちゃだめっすか?」

 顔を真っ青にして、思わず敬語を忘れてエルフェスは答える。

「その時だけ、リット国王の名に於いて騎士長の有給は剥奪だ」
「職権乱用、と言う言葉をご存知ですか?」

 国王は、勝ち誇った笑みを浮かべる。

「どうやら、わたしの辞書にはその様な単語は無いようだ。残念だったな」
「では、労働基準法と言う法律があるのを、ご存知ですか?」
「それも貴君の場合だけは特別に、わたしが直々に書き換えてやろう」
「汚いですよ、国王陛下!」
「わたしが王だ。わたしに従え。はっはっは、万事休すだな、近衛騎士長」
「ちーっくしょーおっ!!」

 リット王国の王都クェード。その中心にある、クェード城。
 毎日平和でぽかぽか陽気な王国で、近衛騎士長の絶叫がこだまする。


あがときー。

何かもう 正直 スマンかった。
反省している。




皮肉大好きです皮肉。
2007.12.12(15:58)|新生ふぁいてぃんぐ!コメント(0)TOP↑
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男ホル注射さぼってます。
理由は、お外に出ると一日中頭痛と吐き気が止まらないから。
生き残りたい。

【スペック】
生年月日:平成元年4月28日
年齢:今年で22才
性別:フツーの兄ちゃん
その他:条件、眼鏡等。但しAT車に限る。
身長:ちみっこい
体重:一ヶ月で10kg痩せた
性格:
自称、ただのにーちゃん
他称、悪人、変態、など様々である。

【好きなもの】
おっさんキャラ。特にFF7のシドとうたわれのクロウとFFTのダイスダークは別格。ゼノギアスのジェサイアとシタン先生も好き。
ガタイのいい男キャラ
パラディン/クルセイダー
ROの女プリースト系のスリット
及び、女教授のふんどし。
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FFTのダイスダークはおれの兄。シドルファスは俺のパパン。
アルルゥとアグリアスたんとゼノギアスのマリアたんとマルーたんと雛苺はおれの嫁。
誰が何と言おうと、死んでもアルルゥと雛苺だけは誰にも渡さん。
チェスも好き。紅茶も愛してる。
アールグレイとダージリンとセイロンウバとアップルティーとカモミールティーは最高だ。

【嫌いなもの】
和風スイーツ(笑)ほぼ全て。きなことかもう大嫌い。
とろけるチーズ嫌い。でもピザのチーズはセーフ。
チーズハンバーグとかチーズバーガーとかはアウト。
後、SFモノの作品もあまり好きじゃない。
和風ファンタジーもあまり好きではないかな。
後、女性の立場を上げよう!って団体も嫌い。もう十分じゃねーか。

正直どちらかと言えば和食派。
肉より魚派。
揚げ物より煮物派。
東京で行ってみたい所は浅草。
旅行に行きたい所は京都。テラへ。
半年以内に叶う夢は甲斐性のある男になる事。
これから先の夢は子供を持つ事。
野望は生涯焼きそばとスパゲッティーとさばみそへの愛を貫く事。しいたけも大好きだよ。愛してるよしいたけ。

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