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るべれてん 【 saylus : [根性] 】

[ジョブ]
サラリーマン
フリーライター
見習いカトリック信徒
エクソシスト

[レベル]
21

[称号]
割愛

[HP]
2051 / 5634

[MP]
315 / 645

 

 

 

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[前書き]
今日は小説です。ぶっちゃけこんなの書いてる時間無いけど。

っつーかいつもの様にあらすじ?です。

Je suis revenue.は、フランス語で、和訳すると『おかえり(直訳:今帰ったよ)』となります。
中年のフレンチコートを着てタイをして、エンジニアブーツを履いたおじさんが外套を脱いで
帽子をラックにかけて、『ただいま』と言う様な雰囲気が出ればいいなーとか思ってます。
何と言うか、カッチェルエイ=ラスティの鉄橋と同様に、無色透明なイメージの話に出来れば
いいな、と思うんだ。


お兄さんのイッヒロマンな若干ビカレスク風味のプロット行くよー!!







 私はこの靴が大好きだ。
長年履き古して、硬化してしまったこの革靴が大好きだ。
人はこの革靴を、襤褸と言い嫌悪感を露にして、火に投げ込むだろう。
しかし私は、そんな輩にこそ嫌悪感を覚える。

 この革靴を入手した当初は、誇らしさで胸がいっぱいだった。
私に合わせてしつらえたと靴職人は自慢げに言ったが、とても窮屈な靴だった。
長距離を歩けば足の皮が剥け、山道を歩けば幾度も肉刺が出来ては潰えた。
 それでも私は、この靴を手放さなかった。否、手放せなかったと言った方が正しいだろう。
 この靴こそが私を証明するものであり、私の全てであるからだ。

 幾年も履き続けたこの靴は、今ではもう完全に私の足にフィットしている。
 何度取り替えたか知れない靴紐を固く結んだ後、軽く脛を叩く。
その行為自体には、正直な所意味は無い。が、気がついたらいつもやっている癖だった。
 私は外套を羽織り、剣を腰に携えた所で軽く手を挙げ、一言呟いて玄関扉に手をかけた。
 先程まで私の後ろに居た女は一言呟いた後、穏やかな笑みを浮かべて驚愕の表情を浮かべた。

私はその時、彼女に「あぁ、ただいま」と呟いただけだった。
彼女もまた、靴紐を締めていた私に「お帰りなさい、ギロー」と声をかけただけだった。





 家を出て歩いていると、やがて石碑の前に着いた。
 私は、その石碑をよく知っていた。
子供の頃に毎日見ていた、短文が刻まれただけの石柱。
 風化したのか、または元々そんな形だったのかはわからないが、角の取れた石碑には、こう刻まれていた。

 『汝が為に』

 汝が為に、私は。
 腰に携えていた短剣を鞘ごとホルダーから引き抜き、石碑の前に静かに置いた。
 汝が為に、私は・・・。
こんな些細な事しか、出来ぬのだから。

 それから私は何時間も歩き、見慣れた書斎へ足を運んだ。
本の山、本棚に収まりきらぬ本、資料、紙片、食べかけのパン、片付けていない皿、コップ。
全てが雑多に置かれた部屋で、幾何学的なラクガキの中心に立ち、呆然と壁を見る。


―― おかえりなさい。
―― ただいま、今帰ったよ。











 城壁の中にある、豪勢な牢獄。
騎士や兵士が歩き回る為、スパイクの穴だらけになった最高級の絨毯。
国を象徴する紋章が刺繍された、手触りのいい垂れ幕。
規則正しく並べられた、大きな石の壁。
贅沢な素材が潤沢に使われている、華やかでありながら冷たくも美しい牢獄。
私は、そこに立っていた。
 鈍重な扉の前に何時間も立って、たまに見回りに訪れる赤い槍の騎士長に会釈をし、
そしてまた何も言わず、ただ槍を携えて立ち続ける。
たまに夜勤が入ったりして、真っ暗な城内を松明の灯りを頼りにして歩き回る。
人から見れば、ただそれだけで高額な給料をもらえるし、名誉な仕事だろう。
ただ、私はこの生活に飽き飽きしていた。

私は、人の為、国の為に兵に志願したハズだった。
だのに、私の仕事は大きく違うではないか。
ただ突っ立っているだけじゃないか。
それだけで、国の為になるものか。
私にはもっと、別の事が出来るはずだ。
別の仕事を。人の為になる仕事を、人の為の糧を。



 ある日、私はいつもの様に槍を携え、ただ呆然と立っていた。
そこへ、紅いマントを翻し、赤い槍を背に負った騎士長を見た。
 一体、彼はどこに行くのだろう。
彼の背には、この国の王がいた。彼が王を護衛していると言う事はわかる。
しかし、彼らの殆どが長旅に備え、荷物等を点検していた。


「一体、彼らはどこへ行くのだろう。」


 億劫そうに、隣の衛兵が口を開く。


「前線に出兵なさるんだと。
 ドレフュス帝国との戦況が芳しくないから、直接指揮を執るらしいぜ。」

「戦況?
 と言う事は、帝国と戦争していたのか?」

「何を寝ぼけた事を言っているんだ。
 数ヶ月前に、国境沿いでドレフュスの人間が反乱起こしただろ?
 で、ドレフュスも我が国も、協力して反乱を鎮圧しようとしただろ?
 んで、うちのバカが間違えてドレフュスの兵隊さんを射殺しちまって、そっから戦争になっただろ?」

「いや、知らんな。初めて聞いた。」

「はぁ?
 お前、どんだけ情報に疎いんだ。これ位知っとけよ。」

「済まんな、善処する。」

「はぁ・・・。」


 これはチャンスだ。
私はそう思って、心の中でほくそ笑んで、槍を持ち直した。






 それから何日かして、私の制服が変わった。
近衛騎士の着る、灰のチュニックに金の鎧、紅いマントではなく、義勇兵の着る、黒く煤けた鎧に
藍のチュニック、そして褐色の、フードの着いたマントを着ていた。
 近衛騎士団に辞表を提出するつもりだった。実際、辞表も書いたし上官に見せた。
が、上官はそれを受けることを拒否した。
 どちらも国を守る仕事だ、近衛騎士団には籍を残しておくから、存分に戦って来い、と言われた。
私はそれを受諾し、ソードランスを手に取った。


 噂通り、戦況は芳しくなかった。
話を聞くと、そもそもの原因となった事件は冤罪らしい。
ありもしない事件を仕立て上げられ、奇襲を受けて友軍は完全に士気を失っている。
だから国王が直々に指揮を執っているが、それでもなかなか士気は上がっていないらしい。
 私はそれを聞いて、弓台となっている見張り塔へ登り、兵に呼びかけた。


「故郷に守るべき者を残してきた者は、手を胸に当てろ。
 国を憂いている者は、手を胸に当てろ。
 そして、死にたくない者、戦う理由が判らぬ者は、手を胸に当てろ。
 私もその一人である。諸君らと同じく、私も手を胸に当てて、自身の言葉を聞く事とする。

 貴様らが持っている剣は、槍は、弓は、何の為にあるのか。
 確かに人を殺す為であるだろう。
 ただ、武器は人を殺す為だけにあるのではない。
 人を守り、国を守り、ひいては己を守る為にあるのだ。
 それを踏まえた上で、再度貴様らに問おう。
 何故、貴様らはここに居る?
 何故、敵を殺め続けている?

 貴様の戦う理由が、誰かを守る為、国を守る為としよう。
 このまま我らがやる気を喪失し、負け続けていればどうなるか。
 クェードは敵の手中に墜ち、老若男女構わず殺められ、辱められるだろう。
 そして、守るべき者も守れぬまま、とこしえの眠りにつくだろう。

 貴様の戦う理由が、死にたくない、わからないとしよう。
 このまま我らがやる気を喪失し、負け続けていればどうなるか。
 兵士、一般人関係無く、残らず殺められてしまうだろう。
 死にたくないと言う理由で戦っているのならば、本末転倒しているのではなかろうか。
 わからないけれど戦っているのならば、負けてしまっては尚更わからなくなってしまうのでは
 なかろうか。
 そうして、何も判らないまま、漠然とした恐怖に苛まれたまま、とこしえの眠りにつくだろう。


 貴様らはそれでいいのか。
 私は、それではいけないと思う。
 国を守らなければならない。守るべきものが、私にはある。
 死にたくはない。私には、まだやるべき事がある。
 だからこそ、守る為に、死なない為に、今こそ戦うべき刻ではなかろうか!
 敵と戦い、己と戦い、そして勝利を得る時ではなかろうか!!

 今こそ、鬨の声を上げる時である!
 己の為に、敵の為に、守るべき者の為に、共に死なぬ為に、武器を取ろうではないか!!」



 そう言って武器を掲げると、周囲に鬨の声が満ちた。
いける。これなら行ける。
私はそう思い、途方も無い充足感で満たされた。






 それから何週間か、私は戦いに明け暮れていた。
ソードランスで敵を薙ぎ、奪回した地に旗を立て、防衛線で敵を一掃し悦に浸っていた。
毎日泥に塗れ、血に塗れ、心の底から嗤っていた。

 見ろ、私はこんなに強い人間だ。
 国を守れる。人を守れる。普通の人間を超越した、強靭な楯となれる、確固たる楯である人間
だ。


 
 やがて戦争は終わり、私は元の職務へ戻る為に、王都クェードへ戻った。
王都へ戻った私は、とても充足した気分で日々を過ごしていた。

 私の守った物は、何て素晴らしいんだろう。
 豪勢な牢獄、寂しくも美しい箱庭、日々の糧を求める為に、その日を生きる為に、そして
死へ着実に近付く為、死から目を逸らす為に、働き続ける人々。
鬱屈したこの箱庭を、ある一定のサイクルで廻り続けるこの箱庭を、私は守ったのだ。

 私は、私の守った物がどれだけ下らなくて、どれだけ空虚で、どれだけ美しく素晴らしいのか
見て回る為に、今までは仕事が終わったら直帰していたのだが、次第に寄り道するようになった。
 ある日、夜勤明け、仕事帰りに興味本位でファミレスへ寄り、ワインとカルボナーラを注文し、
タバコに火をつけ食事を待っていた。
 私の隣には、子連れの2家族が座っていた。かしましくメニューを取り合いし、開き、指差して
いた。
 あぁ、私の守ってきたものは、こんなに素晴らしいものだったんだ。
騒擾ではあるが、とても小さくて大きな幸せを守ったんだ。
私はとても嬉しくなって、上機嫌で煙草をふかしていたが、ふとレジの方を見ると、男とウェイト
レスが言い争っているのが見えた。


―― 何だ、喧嘩か。
―― 助けてやるべきか、否か・・・。

 いいや、そこまで正義の勇者面をしなくてもいいだろう。
私の仕事はあくまでも国を守る事であって、国内の治安を守る事ではない。
そんな事は、憲兵にでも任せておけばいい。
本当に事件になるようだったら、それは助けなければならないが。
言い争い程度では、何も問題は無いだろう。
 実際の所、実に問題はあるのだが、先程噛み締めた幸福感、達成感を咀嚼する事に忙しかった
私は、そんな事まで気が回らなかったのである。
 ・・・それが、私の誤算だった。

 隣の席に座っていたハズの子供が、ふと気付くとレジでウェイトレスと言い争っていた男の
隣に立っていた。
 そして、店内全域に聞こえるような声で、こう言い放ったのだ。


「おじちゃん、人を困らせるような事、いっちゃいけないんだよ。
 人を困らせちゃうようなわるーい人は、パパみたいなせいぎのみかたにやっつけられちゃう
 んだよ。」


 言い争っていた男は、子供にこう言われ逆上し、腰の剣帯に装着していた短剣を子供の喉元に
当て、抱え上げた。


「いいか、レジから金を出し、この袋の中に入れるんだ。
 ちょっとでも変な事をしてみろ、こいつの命はないぞ。」


 何とテンプレート的な返答だ、と思いつつ、やれやれ、面倒なことになったな、と呟きながら、
私は席を立ち賊を捕えようとした。
 が、隣にいた家族の父親二人が先に立ち、賊の前に立ちはだかった。


「てめぇは俺を怒らせた。
 久々の休みを潰しやがった罪、たっぷりと償って貰うぜ。」

「さぁて、私の子供を放してくれないかな。
 そしてちょっと私と、憲兵隊派出所に行こうか。」


 そうか、彼らは憲兵なのか。
それならば、一介の近衛兵如きが首を突っ込んでいい空気ではないな。
私はそう思って、事の成り行きを見守る事にした。

 人質を取っている賊は、当然の事ながら、人質の父親であろう憲兵隊員の子を放す事はしな
かった。むしろ、金を取る事を諦めたのか、道を開けろ、逃がせ、と短剣を振り回し、叫んでいた。
 人質の父親であろう憲兵隊員は、暴れまわる賊にため息をつき、構えていた短剣を下ろした。
それを見た賊はほくそ笑んで、次は道をあけろ、と短剣を持っていた腕を挙げた、そのとき。
人質の父親であろう憲兵隊員は、持っていたナイフを投げた。そのナイフは円を描きながら、
賊の手を貫いた。
 もう一人の憲兵隊員と賊は、目を見開いて人質の父親であろう憲兵隊員を見遣った。
しかし人質の父親であろう憲兵隊員は、まだ『さて、私の子を放してくれないかな。怖がってる
じゃないか。』と、能天気に言った。
 しかし往生際の悪い賊は、尚も抵抗しようと、怪我をしていないもう一方の腕で、人質の子供の
首を絞め始めた。


「お、おい、ガロンヌ、やばくねぇか?」

「大丈夫だ。直ぐに全て終わる。」


 ガロンヌと呼ばれた男は、背負ったクレイモアを鞘から抜き、賊に一歩一歩近付いて行った。
賊の腕に力が篭もる。人質は顔面蒼白で、暴れる気力も無いらしく、ただじっと首を絞められていた。
やがてガロンヌが賊の前に立つと、クレイモアを振り回して、賊の首を刈り取った。
 賊と人質は力なく崩れ去り、人質は解放された。

 そんな一連の様子を、ただ見ているだけだった私は、彼らを褒め称えようと席を立った。
が、それと同時に、もう一人の憲兵隊員が人質に近付き、抱きかかえる。


「おい、おい、しっかりしろ、イゼール!
 今病院に連れて行ってやるからな、しっかりしろ!!」


 恐らくその子の父親であろうガロンヌは、もう一人の憲兵隊員に、親と思えぬ口調で言う。


「あぁ、諦めたほうがよさそうだね。
 息してなさそうだし。連れてくだけ無駄だと思うよ。」

「ガロンヌ、何ふざけて・・・」

「だって、大人の男に力いっぱい首を絞められたんだよ。
 普通、死んでるって。」

「てめぇ!!」

「まぁ、私は憲兵派出所に報告してくるよ。
 イゼールを頼んだぞ、多分無駄だと思うけど。」

「そんな言い方しなくてもいいだろ!!
 てめぇ、曲がりなりにもこいつのオヤジだろ。諦めんなよ、見捨てんなよ!!」

「何、子供一人居なくなったとしても、もう一人作れば問題無かろう?
 ロワールだって、弟か妹を欲しがっていたじゃあないか。」

「だから、それとこれとは話が別だろうがッ!!」

「何が違うって言うんだい。
 子供が死んじゃったら、また新しく作ればいいじゃないか。
 そうすれば元通り、だろ?」

「違う、絶対に違う!!」

「全く。男のヒステリーは醜いぞ。」

「てめぇっ、ふざけんのもいい加減にしろよっ!!」


 もう一人の憲兵隊員はガロンヌに殴りかかろうとしたが、子供を抱えている事を思い出し、
右手を引っ込めた。


「とりあえず、デュローヌ。
 ロワールを頼んだぞ。」

「・・・・・・。」


 デュローヌは無言でガロンヌをきっと睨み付けて、子供を抱えて外へ走り去って行った。
そんなデュローヌを眺めていたガロンヌは、彼の姿が見えなくなった事を確認して伸吟を漏らし、
クレイモアを鞘に収め、奥さんであろう女性に向き直った。


「カタリハ、私は派出所に寄ってから家に帰る。
 ・・・今夜は覚悟しておけよ。」


 呆気に取られた、彼とデュローヌの奥方であろう女性二人をその場に残し、ガロンヌは早足で
外へ出て行った。








 私はその夜、絶望感に苛まれていた。
私の守ってきた国は、民は、こんなものだったのか。
素晴らしいと思っていた物は、こんなに薄汚かったのか。
美しいと思っていた物は、こんなにも醜悪だったのか。
私は、クズの様な物を、身命賭して守ってきたのか。

 何もかも、馬鹿馬鹿しくなってきた。
私は何故、こんな物を守ってきたのだろう。
私は何故、こんな物を守る為に命を賭すと決意したのだろうか。
馬鹿だ。私は、途方も無く馬鹿だ。


 国を守るという大義名分を失った私は、新たな大義名分を探す事に躍起になっていた。
人を守る為に武器を取るか。否、こんな屑の様な人間を守ってたまるか。
・・・大事な人を守る為に、武器を取るか。

・・・・・・そう言えば、私には家族が居たな。
旧リット王国領、ペパン王国とリット王国の国境沿いにある村、ヨークウェイレン。
始めは、私の妻、そして幼い娘を守る為に、剣を取っていたはずだ。
もう何年も連絡を取っていない。
・・・元気だろうか。
・・・・・・私の戦う理由と、なり得るのだろうか。



 次の日私は、赤い槍の騎士長に休暇届を提出した。
騎士長はそれを快諾し、私は単身敵地へ、私の故郷へ、旅に出る事になった。



 私は驚愕した。
育った家、私の家、全てが跡形も無かった。
燃やされたのだろうか。潰されたのだろうか。若しくは、風化し切ってしまったのだろうか。
原因はわからない。が、兎角そこに『無かった』のだ。

 ・・・思い出した。
私の奥さんは、異種族だった。
私は純粋なハーミットだ。そして、彼女はドワーフだった。
ハーミットの寿命は長く、ドワーフの寿命は短い。
・・・・・・つまりは、彼女はもうこの世には居ないだろうと言う事だ。
私の守ってきた者は、塵だ。クズだ。
私が守りたいと思った者、忘れていた者は、もう私の手中にはない。



「「「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁあああああああああああああッ!!!!!!!!!!」」」




 私は喉を振り絞り、肺を振り絞り、声にならない声を出し続けた。




 私は喪失感を抱えたまま、王都クェードに戻った。
部屋へ戻り、机上に沢山積まれた手紙を見た。
 文字はインクが薄まり読めなくなったのも多々あったが、一番最後に書いたであろう手紙は、
はっきりと読めた。

『娘を亡くし、貴方を失い、私には生きて行く気力がありません。
 ありがとうございました、またお会いしましょう。さようなら。』


 守るべきものは、とうの昔に失っていたんだ。
私はそれに気がついた時、失ったモノを取り戻す事を考えていた。





 それから私は何時間も考え、ふと見慣れた書斎へ足を運んだ。
本の山、本棚に収まりきらぬ本、資料、紙片、食べかけのパン、片付けていない皿、コップ。
全てが雑多に置かれた部屋で、幾何学的なラクガキの中心に立ち、呆然と壁を見る。
 二言三言呟き、真っ白な世界で、二三歩歩を進める。

 ヒカリの向こうで私は、『おかえり』と彼女に言うだろう。
そして彼女は私に、『おかえりなさい』と言うだろう。


 刻を遡りて、守るべき者を再び得・・・。






 魔法陣から、一人の男が現れた。
その男は紅いマントを着、金色の鎧を纏い、灰のチュニックを着ていた。
男は自宅の扉に手をかけ、屋内に侵入する。そして、軽く手を上げて、『ただいま』と言った後、
会社帰りの男がそうするように、しれっと玄関で靴を脱ぎ始めた。
 この靴は、義勇兵に志願した時にオーダーメイドで作った靴だ。
始めの頃は足の皮が剥けたり、肉刺が出来たりしたが、今ではもう慣れてしまってそんな事は
なくなった。
 やがて、部屋の奥から女がやってきた。
女は玄関で靴を脱いでいる男を見るや否や、驚愕の表情を浮かべた。
そして、嬉しそうに微笑んで、『お帰りなさい、ギロー』と声をかけた。
靴紐を緩めていた男は、『あぁ、ただいま』と返しただけだった。
 








【あとがき】

何だか不完全燃焼です。久々に小説を書くとこんなものか。
前半のギローさんの心情と、後半のギローさんの心情が若干食い違っているのですが、
やはり共通して言える事は、『世界は灰色だが、美しい』と言う認識でしょうね。

とりあえず時を遡る話が書けて良かったです。
これでエルフイレブンの時遡り救済話が出来たって訳だ。

そして、去年から俺のブログを見てる人は、ガロンヌとデュローヌの話はわかるかもしれない。
ちょっと関連付けてみた。
去年の6月辺りに、こいつらの話のプロットを上げてたんだ。書くつもりないといいつつ。
で、エルフイレブンに組み込んでみる事にしたんだ。
そしたら何だか痛々しい結果になったけど、まぁ、いいんじゃないでしょうか。
発想力の有効活用。




ふんわりした、セピア色の雰囲気に何か限りなく近いモノが出せてれば幸いです。
雰囲気って大事ですよね。特に小説には。

って訳で、暫くはエルフイレブンの逸話集を書くと思います。
よろしくネ☆


2009.09.07(00:12)|ショートストーリーコメント(0)TOP↑
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すごく・・・謎ニートです・・・。

【GID治療】
男ホル注射さぼってます。
理由は、お外に出ると一日中頭痛と吐き気が止まらないから。
生き残りたい。

【スペック】
生年月日:平成元年4月28日
年齢:今年で22才
性別:フツーの兄ちゃん
その他:条件、眼鏡等。但しAT車に限る。
身長:ちみっこい
体重:一ヶ月で10kg痩せた
性格:
自称、ただのにーちゃん
他称、悪人、変態、など様々である。

【好きなもの】
おっさんキャラ。特にFF7のシドとうたわれのクロウとFFTのダイスダークは別格。ゼノギアスのジェサイアとシタン先生も好き。
ガタイのいい男キャラ
パラディン/クルセイダー
ROの女プリースト系のスリット
及び、女教授のふんどし。
アルベール・カミュ作品全般
シャルルマーニュ伝説
エッダ、カレワラ、ケルト神話。
ゼノギアスとFF全般
ベルセルクとクレイモア
3と9と11と10-2,12はやった事が無い。
FFTのダイスダークはおれの兄。シドルファスは俺のパパン。
アルルゥとアグリアスたんとゼノギアスのマリアたんとマルーたんと雛苺はおれの嫁。
誰が何と言おうと、死んでもアルルゥと雛苺だけは誰にも渡さん。
チェスも好き。紅茶も愛してる。
アールグレイとダージリンとセイロンウバとアップルティーとカモミールティーは最高だ。

【嫌いなもの】
和風スイーツ(笑)ほぼ全て。きなことかもう大嫌い。
とろけるチーズ嫌い。でもピザのチーズはセーフ。
チーズハンバーグとかチーズバーガーとかはアウト。
後、SFモノの作品もあまり好きじゃない。
和風ファンタジーもあまり好きではないかな。
後、女性の立場を上げよう!って団体も嫌い。もう十分じゃねーか。

正直どちらかと言えば和食派。
肉より魚派。
揚げ物より煮物派。
東京で行ってみたい所は浅草。
旅行に行きたい所は京都。テラへ。
半年以内に叶う夢は甲斐性のある男になる事。
これから先の夢は子供を持つ事。
野望は生涯焼きそばとスパゲッティーとさばみそへの愛を貫く事。しいたけも大好きだよ。愛してるよしいたけ。

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